とんかつうめ茶づけblog ~Eight days a week~

同人SSサークル「とんかつうめ茶づけ」及び星倫吾の活動記録……なんて。

四葉BDSS | Make me happy

「兄チャマ〜!」
突然僕の部屋に入ってきた四葉の姿に、我が目を疑った。
黒いワンピースに白いフリルのエプロンドレス、
そして頭にはフリルのついたヘッドドレス……。
そう、俗に言う「メイド服」ってヤツだ。
「四葉……その服、どこで手に入れた……?」
「『ニッポンの一部の若者の間でメイド服が流行っている』って聞いたグランパが、
 わざわざロンドンから四葉に送ってくれたのデス。似合いマスか?」
四葉がスカートの裾を持ち上げて挨拶をする様は、
さすが本場英国流の、格の違いを感じさせられた。
「クフフフゥ、名探偵は変装術もカンペキなのデス。兄チャマ、降参デスか?」
前言撤回。
「それで変装したつもりかい、四葉クン?
 メイドならメイドらしく振る舞ってくれないと。恰好だけなら、ただのコスプレと変わらんぞ?」
「……チェキぃ〜」
四葉はがっくしとうなだれ、力なくドアを閉めて部屋を出た。
ちょっとからかってやったつもりなのに、ヘコましちゃったかなぁ。
これだから女の扱いは難しい……。
四葉、ゴメン……。

と、数分後。ドアを叩くノックの音。
「マスター、お茶のお時間ですが、サロンで召し上がりますか?
 それとも、お部屋にお持ちしましょうか」
「……部屋で頂こうか」
「かしこまりました、只今お持ちします」
静かにドアが開き、ティーセットを載せたワゴンが部屋に運び込まれる。
毎日僕にお茶を入れているせいか、紅茶を注ぐ手つきは慣れたもの。
「どうぞ、冷めないうちにお召し上がり下さい」
はじめの一杯はストレートで飲む僕の習慣を見越してか。
飲み頃を計る砂時計が終わると同時に、
ティーポットから注がれたままのカップを、僕に差し出す。
うーむ、カンペキだ。
僕の目の前の四葉は、まさにメイドを演じきっていた。
すごいぞ、四葉。兄チャマからキミに教えることはもう何もない。

カップの縁を踊るように漂う香りを味わっていると、
砂糖が焦げたような匂いが混ざる。
「チェキっ!」
飛び上がるように跳ねた四葉メイドは、慌てて部屋を出て行く。
「チェキィィィィィ!!」
数秒後、キッチンから断末魔の雄叫びが上がる。
「……せっかく焼いたお菓子がぁ……」
気になって四葉メイドを追った先には、煙を吐くオーブンレンジが。
改めて言おう。カンペキだ、四葉。ドジっ子メイドこそ、萌えの定石である。
が、調子づかせると君の身の為にならないので、あえて口に出すのはやめておこう。